翻訳だけでは不十分な理由

海外で作成された医療質問票や患者報告アウトカム(PRO)を日本語へ翻訳する際、多くの方は「正しく翻訳されていれば問題ない」と考えるかもしれません。

しかし、医療質問票の翻訳では、単に英語を日本語へ置き換えるだけでは十分とは言えません。

なぜなら、言葉の意味だけでなく、その言葉がどのように受け取られるかも重要だからです。

同じ意味でも伝わり方は異なる

翻訳の品質は、原文と同じ意味が伝わるかどうかによって評価されます。

ところが、医療質問票の場合はそれだけでは不十分です。

例えば、ある国で患者様の日常生活の質を確認するために「ゴルフをしますか?」という質問が使われていたとします。

その国ではゴルフが一般的な運動習慣として定着しており、「どの程度活動できているか」を確認する目的で作られた質問かもしれません。

しかし、日本で同じ質問を受けた場合、「趣味について聞かれている」「経済的な余裕について聞かれている」と受け取られる可能性があります。

翻訳そのものは正しくても、質問を作成した側の意図とは異なる解釈が生まれてしまうのです。

医療質問票では質問意図が重要

治験や臨床研究で使用される質問票は、患者様の状態や治療効果を評価するための重要な資料です。

患者様が質問をどのように理解したかによって回答内容は変わります。そのため、質問の意図が正しく伝わっていることが重要になります。

もし患者様ごとに異なる解釈が生まれてしまえば、収集されたデータの信頼性にも影響が及びます。

患者様の視点から確認する

こうした問題を防ぐために行われるのが認知デブリーフィングです。

実際に対象となる患者様に翻訳文を読んでいただき、どのように理解したかを確認します。

翻訳者や医療関係者にとって自然な表現であっても、患者様にとっては難しく感じられたり、日常では使わない言葉だったりすることがあります。

実際に利用する方々の声を確認することで、翻訳文が本当に伝わる内容になっているかを検証できるのです。

医療質問票の翻訳では、原文と同じ意味を持つ日本語にするだけでは十分ではありません。

患者様が質問の意図を正しく理解し、自然に回答できる状態になって初めて、信頼できるデータを収集することができます。

認知デブリーフィングは、そのために欠かせない重要なプロセスのひとつです。